センターについて

Cournot Center

クルノ経済研究センターはフランスにある独立した研究機関である。その名前を、経済学の先駆者であり数学者にして哲学者であるアントワーヌ・オーギュスト・クルノ(1801–77)に取っている。

シンクタンクや研究所とは違って、このセンターは触媒としての特別な独立性を享受している。私の持っている古い学術辞書(1936年)によれば、触媒作用とは「ある物質によって反応が加速的に促されることであり、その物質は触媒と呼ばれるもので、それ自体は反応を通して実質的に変化しない」とある。ここで想定されている反応とは、(a) 現在ヨーロッパで議論されつつある経済政策に関する諸問題、(b) 大学、シンクタンクや研究所での真摯な経済研究による的を射た理論的実験的成果、とした場合、この(a)と(b)の両方を提起することから生じるのだ。加速的な反応が望まれるのは、決心がつき決定がなされた後ではなくその前に反応が起こるほうが好ましいからである。クルノセンターが実質的に変化せず繰り返し利用されることを期待する。

「政策論争」は正確には我々が奨励しようと努めているものではないことに気をつけておきたい。政策論争を行なうためには、知識や理解だけではなく、嗜好、欲求、価値や目標なども必要なのだ。問題は、実際には論者たちがしばしばこれらの事柄だけで満足し、彼らにとって都合の良いこれらの「成果」のみを考案し採用してしまうことだ。クルノセンターは真摯な研究の成果を初期の段階に注入したいと思う。

重要なのは、このことが簡単でも一直線な営みでもないことである。経済政策の選択の背後にある分析的な問題点はたいていの場合複雑である。経済学は実験的な科学ではない。使用可能なデータに乏しいし、それらのデータも正確には的を射てはいないかもしれない。それゆえ、解釈は不確かなものとなる。自由な立場に立つ経済学者による様々な研究は、様々な結果に辿り着きうるものなのだ。こういった論争が現にある時、我々のセンターの講演会はそれらを論じていきたいと思っている。原理的なレベルでの生き生きとした議論こそまさに我々が希求するものなのだ。

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代表 ロバート・M・ソロー教授